YOKOSUKA ARTS THEATRE

野島 稔・よこすかピアノコンクール 第6回優勝者に聞く”あの時”と”現在”

2016年開催の第6回野島 稔・よこすかピアノコンクールで見事優勝を勝ち取った鶴澤 奏(つるさわ・かなで)さん。現在、鶴澤さんはバンクーバー音楽院に留学しながら、演奏活動も精力的に行っています。今回はメールインタビューを通して、2016年開催のコンクールを振り返ってもらいました。
(冒頭写真は第6回本戦後の表彰式にて、上段左から審査委員東氏、若林氏、上野氏、下段左から審査委員長野島氏、第2位新納氏、第1位鶴澤氏、第3位尾城氏、審査委員野平氏)

 

――2016年開催の第6回では見事優勝を勝ち取りました。今、あの時を振り返って、勝因は何だと思いますか?

鶴澤(以下T)  本番まで精神的にあまり余裕がありませんでしたが、その為に却ってコンクールだということを意識せずに済んだことかなと思います。

――第1次予選から本選までの1週間で、心がけていたことはありますか?また事前にはどのような対策をなさいましたか?

T 各ラウンド間にあまり日にちがなかったので、各曲をバランスよく練習できるようスケジュールを立てました。
約1800人収容できるホールとのことで、後方の席まで届くような音を意識して練習していました。

――鶴澤さんの演奏について、野島審査委員長からは「けれん味のない音楽」というコメントもありました。ご自分の音色は、目指しているものに向けて作りこむのでしょうか、それとも自然と出てくるものですか?

T その箇所の雰囲気や目指したい音色のアイデアは割に自然と出てきますが、それがきちんと音になって聞こえてくるかどうかは、練習時の録音等で確認しながら作っていくことが多いです。

――コンクール後、野島審査委員長にも師事を受けられました。野島先生からは、レッスンの際にどんなアドバイスがありましたか?

T 野島先生はいつも核心をつくような言葉を用いてレッスンして下さりましたが、同じかそれ以上に、横で弾いてくださる音から多くを学びました。先生のピアノからは、世の中のピアニストからは聴けないような、誇張等が全く無い「本物」の音がします。レッスンでは先生のピアニズムの精緻さと、作品の大小に関わらず常に真摯に音楽を紐解かれていく様に、いつも圧倒されました。
留学時にも大変お世話になり、その際に頂いたアドバイスの一つには「まず古典をしっかり勉強しなさい」と…。短い期間でしたが、先生のレッスン、そして音楽家としての在り方から本当に沢山の事を学ばせて頂きました。

――現在バンクーバー音楽院に留学なさっていますね。レッスンでは、どういったことを学んでいますか?

T 現在ついているリー・カムシン先生は演奏についてどうこうしろとはあまり仰りません。
多いのは身体の使い方についてのアドバイスで、テクニック的な問題の殆どは、手や腕以外の身体の各部位もうまく使うことで解決できることがわかりました。
他の人のレッスンは自由に見に行くことが出来、門下生でディスカッションする「マスタークラス」というものもあります。ここでは各学期ごとに作曲家を決めて、その作曲家の小さい作品(子供用など)を毎週皆で持ち寄ります。小さめでシンプルな作品ほど作曲家の語法を学ぶのに適しているというのが先生のお考えで、今はシューベルトのレントラーに取り組んでいるところです。


(写真左から)鶴澤さんとリー・カムシン先生

――最後に、第7回のコンテスタントに向けて、アドバイスがあれば教えてください。

T 日本を代表する音楽家の先生方に演奏を聞いて頂け、最後には講評も頂ける点がこのコンクールの素晴らしい点の一つだと思います。私は出場してみて、自分の演奏や音楽観がどういう風に観客側へ伝わるのかを良く知ることが出来ました。会場とお客様も温かい雰囲気なので、是非自分をオープンにして、チャレンジして頂きたいです。

 

――鶴澤さん、ありがとうございました。
第7回野島 稔・よこすかピアノコンクールは現在応募受付中。締め切りは2月24日(土)です。
詳しくは専用ページをご覧下さい。

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