YOKOSUKA ARTS THEATRE

森 麻季 スペシャル・インタビュー

完璧な技術と透明感あふれる歌声、そして深い音楽性、美しい舞台姿で絶大な人気を誇るソプラノ歌手の森 麻季さん。横須賀芸術劇場では、今年6月7日にテノールの福井敬さんとのデュオ・リサイタルを予定していましたが、新型コロナウイルスの影響により12月26日に延期となりました。森さんに、コロナ禍での取り組みや活動再開、そして12月のリサイタルの聴きどころなどをお聞きしました。

新型コロナウィルス感染症拡大の中で送り続けた歌声

今年は、新型コロナウィルス感染症の拡大が続き、森さんも演奏会等の活動ができなくなった時期がありました。森さんが、ご自宅からツイッターで人々の心に寄り添うような楽曲の数々を配信されていたのを拝見しましたが、どのような思いで始められたのですか?また、反響はいかがでしたか?

 コロナは、全ての人に起きたことで、その影響ははかり知れず、多くの方々が急に閉ざされた日常を取り戻すのに時間がかかる中で、悲しいニュースも多く、先行きが見えない不安と慣れない生活のリズムに、心に疲れを感じてる方々も多いのではないかと思います。
 そのようなときだからこそ、音楽の力をかりて何かできないだろうか、皆さんに音楽を届けたいという思ったことがきっかけです。医療従事者の方々のご苦労に感謝の気持ちを伝えたい思いもありました。
 辛い時には心に寄り添ってご自身の気持ちを抱きしめてあげてほしいと願って、悲しみに共感する歌や、勇気を与えてくれるような歌など、探しました。
 古い歴史を持ち、長年弾き継がれてきたクラシック音楽の、美しいハーモニーの響きは、自然の中にいるのと同じように、人の心に沁みいり、癒し、リラックスさせる調和(寄り添う力)があるとおもうのです。自分がそうだったように、辛いときに音楽は心の救いとなり、支えとなります。
 ファンの方々からすぐに反響がいただけたことはすごくうれしかったです。リツイートも驚くほどの数でしていただきました。少しでも励ましになればと思ってはじめたことでしたが、音楽を通して励まされ元気をもらったのはわたしのほうかもしれません。

多くの人が外出自粛を余儀なくされましたが、逆に、そのような状況下だからこそ森さんご自身が、打ち込めたことや発見できたことは、ありましたか?

 時間がとにかくたくさんできましたので、新しい作品に取り組む時間がもてました。今年10回目を迎えた「愛と平和への祈りをこめてのコンサート」では、字幕の翻訳にも挑戦しました。ゆっくりと作品と向き合う時間はかけがえのないひとときでした。
 また、家族と過ごす時間がふえたことも心に落ち着きと豊かさを与えられたように思います。愛犬たちとのコミュニケーションもとれ、私に信頼を持って心をひらいてくれているように感じます。
 自粛中、音楽に飢えていた分、徐々にコンサートが再開された今はより音楽の素晴らしさを感じます。オーケストラの美しい音の中にいると、自分の悩みは些細なことに思えるほど、感動します。

活動再開について・・・

活動再開されたのは、いつですか?またその時のお気持ちを教えてください。

 コンサートは3月以降すべてが、中止もしくは延期となりました。延期してまた延期ということもありました。コンサートの実現にむけてご尽力くださった主催者の皆さまには心から感謝しております。
 8月には、オンラインでのコンサートにはじめて参加しました。全国の方々が配信をみられるとのことで、アヴェ・マリアや日本歌曲など、なるべく親しみをもっていただける作品をプログラムにしました。
 当日は演奏することに精一杯でしたが、書き込みしてくださった方々のコメントをあとからうかがって、配信ならではの楽しさを味わいました。
 そして、感染症医療チームとの連携で、バッハ・コレギウム・ジャパンとのマタイ受難曲の公演がされたのは、私には奇跡のように思えました。はじめてのソロを歌いました。
 バッハの芸術は、一人一人の卓越した技量を融合し、激しいドラマと神聖なハーモニーとなって、音楽の素晴らしさを改めて深い意義として感じることができました。
 作品のもつ素晴らしさと崇高な美しさに触れられる時間のなんと幸せだったことか…。聴けば聴くほど、知れば知るほど、勉強すればするほど、その奥深さと至極の音楽に深く感銘するばかりで、涙を流さずに歌い切れるだろうかと思ったほどです。
 そして、リサイタルとしては、 ヶ月ぶりに9月13日に東京オペラシティで演奏会をいたしました。シューマンの連作歌曲集「女の愛と生涯」、歌劇〝ノルマの清らかな女神よ〟に初挑戦した、胸いっぱいのコンサートでした。その後大阪でも同じプログラムで演奏することができ、多くのお客様と音楽を共有できた幸せを心の底から感じて、全てのことに感謝の思いを強くしました。

横須賀の思い出、そして今回のリサイタルについて・・・ 

森さんは05年のソフィア国立歌劇場「リゴレット」でジルダ役で出演以来、久々に横須賀芸術劇場にお迎えします。〝横須賀〟に何か思い出があれば、教えてください。

 そうでしたね。リゴレットはわたしの歌手としてのデビューとなったオペラ作品でもあり、ソフィア国立歌劇場公演は今でも懐かしく思い出されます。
 日頃から、愛犬との散歩で草木の彩に季節の変わり目を感じたり、海へ出かけて潮風を感じたりと、自然を肌で感じる時間は大切にしています。心がリラックスして、リフレッシュします。
 横須賀は山も海もあってよいところですね。おいしものもたくさんありそうです!

今回のリサイタルは、テノールの福井敬さんとの共演。プログラムも大変バリエーションに富んでいます。聴きどころをご紹介いただけますか?

 聴きどころは、なんといっても、人の声の素晴らしさ。生の歌声の醍醐味ですね。福井さんの輝かしいオペラ・アリアはもちろん素晴らしいですが、日本歌曲やカンツォーネも惚れ惚れする素敵さです。
 コロナはまだ多くに不安をもたらしており、そのような中で心配と複雑な思いでご来場くださるみなさまに、「来て本当によかった!!」と思ってもらえるような舞台にしたいという気持ちはより強くなりました。
 衣装を楽しみにいらしてくださるお客様も多いので、曲の雰囲気をかえるために工夫したいとおもっています。どうぞ、お楽しみに!

森さんと福井さんは、それぞれのステージでお忙しい一方、度々共演されていらっしゃいますね。森さんから見た福井さんのお人柄や、これまでのステージでの思い出など、教えていただけますか?

 ご一緒していていつも幸せな気持ちにさせてくださるので、共演させていただく機会はいつも楽しみにしています。
 思い出といえば、やはり二人のコンサートで、大雪のため私が開演に間に合わず、大変ご迷惑をかけてしまったことがあるのですが、福井さんは、困った顔ひとつせず、お客様を待たせてはいけないからと、前半を全部お一人でうたってくださったのです。
 そして、私が会場にかけつけたときにも、優しく迎えてくださり、心強く音楽でリードしてくださいました。今でもあのときのお心に大変感謝しています。

ピアニストの山岸茂人さんは、どのような方でしょうか?

 山岸さんは、デビューのときからなのでもう20年以上のコンビで、常に信頼感をもって音楽つくりをしています。歌手は変幻自在ですから、それに合わせなければならないピアニストは、大変なご苦労があると思いますし、オペラ・アリアではオーケストラにもなり、その世界に誘うのですから、大変重要な存在です。
 音楽の上で、山岸さんは、どんなことがあっても必ずちゃんと受けとめてくれます。私が、何も気にせず、何も心配しないで、ただ歌うことに集中して、自由に歌うことができるのは、山岸茂人さんのおかげなのです。

 どんな時でも、音楽の力を信じ、真摯な姿で楽曲に向き合われている森さんのメッセージは、心に優しく響きます。12月のコンサートは、信頼できるパートナー達との気さくで温かみのある、そして生の歌声の素晴らしさを改めて再認識できるものとなることでしょう。今年最後のご褒美に、オペラハウスのような〝よこすか芸術劇場で〟歌曲やカンツォーネ、オペラ・アリアの名曲の数々をたっぷりとお楽しみください。

横須賀芸術劇場リサイタル・シリーズ60
森 麻季&福井 敬 ゴールデン・デュオ・リサイタル

2020年12月26日(土) 15:00開演 (14:00開場)
よこすか芸術劇場
S席:5,500円 A席:4,500円 ペア券(S席):10,000円

※ご鑑賞にあたっては劇場の感染症拡大防止対策に皆様のご協力をお願い致します。

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