YOKOSUKA ARTS THEATRE

ジャズライブで秋の醍醐味を堪能しよう!

音楽ジャーナリスト 原田和典

 食欲の秋、読書の秋、芸術の秋、スポーツの秋。いろんな季節の楽しみ方があるけれど、“ジャズライブの秋”はすべてを兼ねる。飛び切りの熱演に我を忘れて聴き入ればお腹がすいてくるし、初めてライブに接したミュージシャンに“一聴ぼれ”したら、どんな経歴を持っているのだろうと文献をあさりたくなるのが人情というもの。映画の主題歌や挿入歌がジャズにアレンジされている場面に接したり、絵画や彫刻に触発されて生まれた演奏家のオリジナル曲などを聴くと、その源について知りたいという探求心も高まってくる。ジャズのリズムに身をゆだね、オープニングからアンコールまで1曲ごとしっかり拍手を送れば、十分、運動不足の解消にもなりそうだ。つまり、ジャズライブを楽しむことで、ありとあらゆる秋の醍醐味を堪能できるのだ。

 秋も深まる10月29日に行なわれるのは「平賀マリカ&ヨコスカジャズドリームズ2022 スペシャル・ライブ」。ジャズと映画は20世紀のアメリカで大きく発展し、今も切っても切れない関係にある。会場の横須賀HUMAXシネマズといえば、ブルーノート・レコードやビル・エヴァンスなどの特集でもジャズ・フリークを唸らせた映画館。日本一ジャズに力を注いでいるであろうシアターと、「ジャズ・ディスク大賞ボーカル賞(国内部門)」など数々の栄誉に輝くシンガーの出会いは、改めて映画とジャズの相性の良さを示すはずだ。

 11月5日には「桑原あい ソロ・ピアノライブ」が行なわれる。演奏予定曲として「デイドリーム・ビリーバー」(ザ・モンキーズ、忌野清志郎)、「ディア・ファミリー」(自作)、「ウエスト・サイド・ストーリー」(レナード・バーンスタイン)が発表されているが、これだけでも彼女の並外れて幅広い指向が伝わるはずだ。しかも今回はソロということで、その音楽性の核、ピアニストとしての根っ子に触れうる貴重な機会にもなろう。響きに定評のある会場が、アコースティック・ピアノ一台の音で満ちる日が待ち遠しい。

 一方、大編成ジャズの醍醐味に浸れるのが12月24日の「Lowland Jazz クリスマス・ライブ」である。Lowland Jazzは「ジャズの敷居を低く」をポリシーとするビッグバンドで、アニメや映画の音楽、YouTubeの配信等にも積極的に取り組んできた。とにもかくにも、“たくさんのひとが一斉に演奏して、それが大きな音の塊となってこちらに迫ってくる”のはビッグバンドだからこその魅力。クリスマスソングも交えながら、親子三世代が笑顔になれる極上のエンタテインメント空間へといざなってくれることだろう。

 また、11月5日と6日には、「横須賀トモダチジャズ 2022」が開催される。先に触れた「桑原あい ソロ・ピアノライブ」に加え、アマチュアやプロミュージシャンが街かどの3か所で演奏する「ヨコスカジャズストリート」(5日、6日)、横浜や横須賀で活動するビッグバンドによる「EM Club レガシー “Big Band Day”」(6日)などバラエティに富む。

 まさしく、いろんなジャズが目白押し。全部見たい、からだがひとつしかないのが惜しいとおっしゃるファンも数多いに違いない。その気持ちはわかる。だが、おせっかいを承知で申し上げると、体調バッチリで見るためには早めに寝て十分な睡眠をとっておくのがモアベターであり、さらにいうなら時間の余裕をもって会場に到着しておきたい。早めに着席して、まだ無人のステージを見つめながら、どんな演奏が楽しめるだろうかと思いを巡らせること―それはミュージシャン自身も決して味わうことのできない、リスナーだけが所有できる至福のひとときなのだから。