YOKOSUKA ARTS THEATRE

上村文乃チェロ・リサイタル 本人が語る「ここが聴きどころ」

 今回のプログラムは前半を王道クラシック、メインにショスタコーヴィチのソナタという大曲を置き、その2つの世界を繋ぐ小品類を間に構成しました。

 前半のバッハ、ボッケリーニ、ベートーヴェンはチェリストにとっての『3大B』と申しても過言でない程、技術的にも音楽的にもチェロの歴史に大きな影響を与えた作曲家です。
 あたたかい音色、人の声と同じと言われる音域の広さ、そしてお客様と真正面から向き合う弾き姿からも、チェロという楽器は、特に人間と親和性の高い楽器だと思います。その魅力を存分にお感じいただけたら幸いです。

 休憩を挟んで、サン=サーンスの白鳥、日本人作曲家から2作品、そしてピアソラでふっと肩の力を抜いていただいて、フィナーレの前にエトヴェシュです。
 この作品は、日本の平安時代に書かれた「更級日記」という回想録のテキストを読み上げながら演奏します。言葉と音楽は密接な関わりがあると常に思いますが、日本語の詩を読む事によってその境目がおぼろげになるような感覚があるかもしれません。
 最後に演奏するショスタコーヴィチは、20世紀の痛ましさから、目まぐるしい社会の発展、その中で人間らしく生きるという事を深く感じさせられる作品です。ピアニストでもあったショスタコーヴィチならではの超絶技巧、中野翔太さんの清らか・知的で素晴らしいピアノとの化学反応をお楽しみに!

 …今日私たちが平和な世界を享受できていること、それは当たり前のことでなく、日々だれかを大切に想う気持ちの積み重ねで成り立っているのではないでしょうか。
 音楽を聴くという体験が、皆さまにとって、生きて行く上での“なにか”を考えるきっかけとなりましたら、私のなによりの幸せです。

 みなさまの御来場、横須賀にてお待ちしています!

<公演情報>
横須賀芸術劇場リサイタル・シリーズ66 上村文乃チェロ・リサイタル
2022年 11月20日 (日) 15:00開演 (14:15開場)
ヨコスカ・ベイサイド・ポケット
S席:4,000円 A席:3,500円

ピアノ 中野翔太

曲目
ボッケリーニ チェロ・ソナタ 第6番 イ長調 G.4
ベートーヴェン 魔笛の主題による12の変奏曲 ヘ長調 Op.66
J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV1007
サン=サーンス 白鳥
間宮芳生 田の草取り唄   
倉田 高 日本人形の踊り   
ピアソラ(上村編) リベルタンゴ
ペーテル・エトヴェシュ ポリーヘの2つの詩-朗読するチェリストのための独奏曲
ショスタコーヴィチ チェロ・ソナタ 二短調 Op.40