YOKOSUKA ARTS THEATRE

よこすか芸術劇場 天井改修工事レポートVol.4

前回は、客席の中に棚足場を組んでいく様子をお伝えいたしました。

 天井改修に向けての現地調査や事前の準備のためによこすか芸術劇場(大劇場)を休館したのが、2024年7月。あっという間に1年近くの歳月が過ぎ、様々な工事関係者と同じ建物の中で一緒に仕事していることに、不思議と違和感がなくなってきた今日この頃です。
 よこすか芸術劇場では、この長期休館を利用して、天井改修のほかに、舞台設備の更新も行われます。
 ひとくちに「舞台設備」といっても、大きく分けて、舞台機構、吊物装置、舞台照明、舞台音響の4つから成り立っています。
 今回は、専門的にならないように気をつけながら、そのあたりをお伝えしたいと思います。

<吊物装置に吊られる幕類>

 「Vol.2」でお伝えしたとおり、すでにどん帳は取り外して専門工場に運び出され、オペラカーテンやその他の幕類も全て取り外されました。

 リニューアルオープンの際には、どん帳を除いて、全て新調します。
 じゃあ、新調される幕類ってどんなものがあるのかって言うと、全ての幕類を細かく説明していると今回のブログに収まりきらなくなるので、代表的なものを簡単にお伝えします。オペラやバレエでは欠かせない「オペラカーテン」、どん帳とほぼ同じ大きさの全面が黒い「暗転幕」、舞台の両サイドを隠す「袖幕」や舞台の上部を隠す「文字幕」、映像等を舞台の奥から映写できる「リアスクリーン」、舞台の一番奥にある照明などで色を染める「ホリゾント幕」などなど、40枚近くにのぼります。

<舞台照明>

 舞台照明機器については、客席天井部に付いている「客電」と言われるライトや、舞台上から舞台全体をフラットに照らして、主に作業灯として利用するボーダーライト、ホリゾント幕に背景を染めて場面を表現するためのホリゾントライトを、それぞれハロゲンライトからLEDに更新します。
 また、それら照明機器を動かすための操作卓の入れ替えや、持ち込まれたデジタル機器がより便利に使えるように、電力盤を改良するなど、劇場としての設備整備にも着手します。

 舞台の世界では、機器のデジタル化が急速に進んでいます。その流れにいかにして対応していくかは、公演のために利用される方の目線でいえば、使いやすさにも通じてきます。
 今回の更新は、いわば、時代に乗り遅れないようにするためのアップグレードです。
 一方で、それ以外の舞台照明機材については、これからも現役として働き続けます。
 よこすか芸術劇場(大劇場)で保有している舞台照明機器は、約1,150台。そのうちの約半数は、普段から照明倉庫の中で保管していますが、残りは照明ブリッジなどに吊った状態で保管しています。

 その吊った状態で保管している機材は工事を進めるうえでは邪魔になるので、工事期間中は全て撤去することに。
 客席側に約270台、舞台の上空に約250台、なんと合わせて520台!
 さすがにこれだけの数の機材を置いておけるスペースはなく、空調管理がされた倉庫を別に借りて保管することになりました。
 なんと1台ずつ、丁寧に梱包!

 どん帳を運び出す時は、あれだけの大物(レアもの)だったので、多くの劇場関係者に見守られながら旅立って行ったのですが、こと照明機材については、見慣れているというか、元々が移動機材だからというか、気が付けばひっそりとすべての搬出が終わっていました・・・。
 どん帳と同じように外部で保管される備品でありながら、あまりの待遇の違いに、これを書いていて申し訳なくなってきたので、せめて戻って来るときぐらいは、自分だけでもお出迎えしてあげたいと思います。

 天井改修工事と言っても、主目的の大劇場の客席天井だけでなく、地下2階にある大小リハーサル室の天井や4階のメインロビーの天井などなど、色々な場所で改修工事を行っていますので、そのあたりについての進捗状況もお伝えしていきたいと思います。

 夏場を迎え、空調の効かない現場での作業。
 熱中症等気を付けて、工事関係者の皆さん、最後まで「どうぞご安全に!」
 それではまた、次回お会いしましょう。

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