メンデルスゾーン
アンダンテと華麗なるアレグロ Op.92
フェリックス・メンデルスゾーン(1809-1847)は、ドイツの裕福な家庭に生まれ、幼い頃から天才少年として知られた音楽家です。彼の作曲にはほとんど苦労を感じさせるところがなく、自然体でセンスあふれる作風が特徴とされています。
この作品は、まず表情豊かなアンダンテのテーマから始まります。ピアノ連弾とはいえ、冒頭では一人ずつ交互に演奏する形で始まり、静かに、でもロマンティックにお互いが語り合うかのようです。続く「華麗なるアレグロ」では、連弾作品の中でも特に難易度の高い高速パッセージが展開され、メンデルスゾーン特有の甘美なメロディが巧みに織り交ぜられながら、華やかに楽曲が進んでいきます。甘く美しいメロディとスリリングに駆け抜けるパッセージの両方をお楽しみ下さい。
ガーシュウィン(アンセットシス編曲)
ラプソディー・イン・ブルー ~Tribute to the American history~
20世紀アメリカを代表する作曲家、ジョージ・ガーシュウィン(1898-1937)は、ブルックリン生まれ。兄アイラと共にポピュラーソングの作詞作曲を手がけ、やがてミュージカル界で人気作曲家として名を広めました。そんな彼に、当時のジャズ・バンドのリーダー、ポール・ホワイトマンが新作を依頼し、わずか3週間で誕生したのが《ラプソディー・イン・ブルー》です。現在広く知られているオーケストラ版は、編曲家グローフェによるもので、ジャズの要素やブルーノートが取り入れられた革新的な作品として知られています。日本では、漫画「のだめカンタービレ」のドラマ化で、劇中でこの曲が使われた事により、お茶の間にも広く知れ渡ることになりました。
今回の演奏では、原曲にあるカデンツァ(ソリストの即興的な独奏部分)に私たちオリジナルのカデンツァを挿入しています。「アメリカ音楽の歴史をたどる」というコンセプトで構成されており、ビッグバンドのような響きからジャズのスタイル、それからミニマルミュージックまで…..多様な音楽の要素が組み込まれています。そのため副題には「Tribute to the American history(アメリカ音楽の歴史へのオマージュ)」という言葉を添えています。自由と融合の精神を宿すガーシュウィンの音楽に敬意を表しながら、私たちなりの表現でお届けします。
マイケ・ナス DiGiT #2
「音楽とは?芸術とは?時間とは?」——そんな根源的な問いを投げかけ続ける、オランダ出身の現代作曲家マイケ・ナス(1966- )によるピアノ連弾のためのユニークな作品です。
本作には、耳だけでなく目でも楽しめるユーモアあふれる仕掛けが随所に散りばめられています。一見(あるいは一聴)すると、とても軽やかで楽観的な印象を受けますが、楽譜には驚くほど緻密で厳格な指示が記されており、時間の流れが精密に構築されています。視覚と聴覚を通じて、音楽そのものの枠組みに挑むような作品です。
後半最初の曲、何はともあれ、どうぞ肩の力を抜いて、お聴き?ご覧?いただこう!
メンケン(山中惇史編曲)
リトル・マーメイド・メドレー
夏の海にぴったりなディズニー映画『リトル・マーメイド』は、人間の世界に憧れる人魚アリエルの恋と冒険を描いた物語。アラン・メンケン(1949- )が書いたディズニーの音楽の中でも我々が最も好きなのが本作。今回演奏するのは、物語の幕開けを彩る「トリトンの娘たち」、陽気でリズミカルな「アンダー・ザ・シー」、恋心をそっと描く「キス・ザ・ガール」、そしてアリエルの願いを込めた「パート・オブ・ユア・ワールド」のメドレーです。兄弟デュオで有名なレ・フレールさんとのコンサートでの“ディズニー対決!”で書いたもので、その場限りのものかと思っていましたが、この独自のアレンジの反響が大きく、しばしば演奏するようになりました。夏のひとときを、海のきらめきと夢に満ちた音楽とともにお楽しみください。
ジョン・ウィリアムズ(山中惇史編曲)
映画『ハリー・ポッター』より「ヘドウィグのテーマ」「ハリーの不思議な世界」
現在もなお第一線で活躍を続ける映画音楽界の巨匠、ジョン・ウィリアムズ(1932- )。私たちが生まれる前から世界中で愛されてきた作曲家ですが、私たち自身の青春時代も、彼の音楽なしには語れません。その敬意と愛着が高じて、彼の名作を自ら編曲し、アルバム『ジョン・ウィリアムズ ピアノコレクション』を制作したほどです。
本日はその中から、『ハリー・ポッター』より2曲を演奏いたします。この物語において、ウィリアムズの音楽はまさに不可欠な存在であり、映像以上に魔法の世界を語りかけてきます。何度演奏しても、その壮大さと色彩感に心が躍り、まるで小学生の頃、初めてこの音楽に出会った時の気持ちに戻れるような気がします。
ジョン・ウィリアムズ(山中惇史編曲)
映画『スター・ウォーズ』より「メイン・タイトル」
最後は、“ジョン・ウィリアムズ”といえば、決して外すことのできない映画音楽の金字塔、それが『スター・ウォーズ』シリーズのメインテーマです。1977年に公開されたシリーズ第1作『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の冒頭を飾るこの楽曲は、壮大なファンファーレで始まり、オーケストラの力強い響きが銀河の壮大な冒険を予感させます。ヒーローの勇敢さやスケールの大きな物語を象徴するような華やかさと、ブラスの輝き、リズムの躍動感が印象的です。演奏には多彩な技術が求められ、アンサンブルの難易度も高い作品ですが、アンセットシスの演奏会では特に人気の高い1曲となっています。我々の演奏会でしか聴けない特別なナンバー、最後の一音までお楽しみください。