YOKOSUKA ARTS THEATRE

溶け合う声、響き合う色〜注目の二人が奏でる女声デュオの魅力

音楽評論家 加藤浩子

ソプラノ&メッゾソプラノ。筆者は、この組み合わせが大好きだ。なぜなら、無限のヴァリエーションがあるからだ。オペラでは姉妹から恋敵、友人同士、そして恋人同士(メッゾには「ズボン役(※)」がある)までさまざまな組み合わせを演じることができるし、歌曲では色合いと音域の差異を生かして、物語や感情を鮮やかに紡ぎ出す。深く広いその可能性に魅せられ、多くの作曲家が名曲を書いてきた。

※ズボン役 ・・・ オペラで女性歌手が男性(主に少年、青年)のキャラクターを男装して演じる役のこと

この5月、ヨコスカ・ベイサイド・ポケットに登場する藤井玲南(写真左)と林眞暎(写真右)は、今いちばん聴きたいソプラノ&メッゾソプラノの組み合わせである。ドイツやウィーンに学び、モーツァルトやロッシーニのオペラの舞台に立ちつつ、さまざまな言語の、そして幅広い時代の歌曲を習得した藤井は、甘く澄んだ音色と流れるようなフレージング、ブリリアントな高音域、知的なアプローチで注目を集めるリリック・ソプラノ。いっぽうミラノに学び、ドイツやイタリアのオペラハウスでロッシーニからヴェルディ、プッチーニまでさまざまなオペラの舞台を経験し、オーケストラコンサートにも引っ張りだこの林は、日本人には珍しいコントラルトの深い音域、濃密な声をもち、ダイナミックな表現力とスケールの大きさを持ち合わせた大器だ。ピュアな藤井と劇的な林、コントラストが生きる組み合わせなのである。二人はすでにデュオ・コンサートで共演し、絶賛を博している。

プログラムのテーマは、横須賀にふさわしい「海」。前半ではロッシーニの船乗りたちの歌から、アジアヘの憧れを歌うエキゾティックなラヴェルの「アジア」、フォーレならではの典雅さと活力を併せ持った港町ナポリの舞曲「タランテラ」まで。音楽で世界旅行の趣もある。後半はオペラのアリアとデュエットの名曲。定番の『カルメン』や『ロメオとジュリエット』、『ホフマン物語』に加え、横暴な主人に対抗して男性への変身願望を歌う洒脱なアリア「いいえ、旦那さま」、激しい嫉妬心をドラマティックに歌う「苦い喜び、甘い責苦」と言った比較的レアな曲も聴けるのが嬉しい。

声楽界という大海をこれから担っていく二人の声を、海の、そして開明の街 横須賀で存分に味わえるとは、なんと幸せなことだろうか。

公演概要
横須賀芸術劇場リサイタル・シリーズ75
藤井玲南&林 眞暎 デュオ・リサイタル
2026年 5月16日 (土) 14:00開演 (13:30開場)
ヨコスカ・ベイサイド・ポケット