YOKOSUKA ARTS THEATRE

ショスタコーヴィチとキング・クリムゾンを2人の音楽評論家がその魅力を伝える 第4回(最終回) キング・クリムズンという『意思』が降りてくる時にキング・クリムズンは動きだす、その際に自分のもとに降りてくる(ロバート・フリップ)

音楽ライター 人見欣幸

 異色の実力派弦楽四重奏団 モルゴーア・クァルテットの公演を控え、ショスタコーヴィチとキング・クリムゾンの魅力を紹介。

 キング・クリムゾン(クリムズン)結成時のメンバー中、五枚目のアルバム『太陽と戦慄』の時点で在籍しているのはギターのロバート・フリップのみとなっていたが、彼は自分がリーダーだといわれるのを拒む傾向がある。彼は「キング・クリムズンという『意思』が降りてくる時にキング・クリムズンは動きだす。その際に自分のもとに降りてくる」という表現をしている。「・・・それがリーダーということなのではないか」とツッコんではいけない(笑)。

 話を戻して。

 デビュー・アルバム『クリムゾン・キングの宮殿』は「21st Century Schizoid Man」という曲で幕を開ける。モルゴーア・クァルテットのデビュー・アルバムのタイトルそしてアートワークがこれを元にしているのは言うまでもないだろう。「LPジャケット」といわれて本作を真っ先に思い浮かべるかたは少なくないと思う。それほどに知られたアルバムだ。楽曲、演奏、曲順、どれをとっても完璧な一枚のアルバム、四十五分の組曲、そんな一枚である。

 フリップ以外のメンバーを一新した『太陽と戦慄』での五人から一人ずつ減っていく形で、四人で『暗黒の世界』、三人で『レッド』は作られた。その三人、フリップ(ギター)、ジョン・ウェットン(ベース&ヴォーカル)そしてビル・ブルフォード(ドラムズ)によるアンサンブルは、アメリカのブルーズ/リズム&ブルーズの大きな影響下にあるロックの中で、黒人音楽の影響を見出せない独特のグルーヴがある。独特なバンドである彼等の、特にこの数年間は、彼等のロック・バンドとしての力強さが突出した時期といえるだろう。筆者が最も好きな時期でもある。そして『レッド』はファースト・アルバムと共通する曲調・構成のアルバムだったのが興味深い。フリップにはひと回りした感慨があったかもしれない。発売直後に彼等は解散している。 その後、彼等は半分がアメリカ人メンバーとなって八十年代に復活し賛否両論を呼んだが、以降の充実した活動で否定的な意見を減らしていった。その姿勢こそが紛れもなくロック・バンドのそれであり、文字通りプログレッシヴな姿勢を貫いている。フリップの年齢的な問題もあり、キング・クリムズンは解散するのか、それとも遂にフリップ抜きで再始動するのか、それはフリップ次第なのだろう。・・・やっぱりリーダーじゃん(笑)。

モルゴーア・クァルテット
クラシック /プログレッシヴ・ロック名曲選 Vol.2 「世紀の饗宴」

モルゴーア・クァルテット クラシック&プログレッシヴ・ロック名曲選 第2弾

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2023年 11月19日 (日) 15:00開演 (14:30開場)
ヨコスカ・ベイサイド・ポケット

https://www.yokosuka-arts.or.jp/performance/detail/?id=2647